自分を知る

いざというときの行動から、自分を知る

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【自分を知る】3.11のときのこと

先日、大きな地震がありました。

思わず、10年前の震災のときのことを思い出しました。

 

10年前のあの日、わたしは自宅にいました。

激しい揺れ。

そして、その揺れが長い間続きました。

まるで、船の上にいるようでした。

 

はじめの揺れのショックが少し収まった後、家中の窓やドアを開けにかかりました。

玄関のドアを開けた途端。

サッと通り過ぎたものがあります。

皆が家財を守ろうと家の中に残るなか、たった一人、一目散に先に自分だけ避難した者がおります。

 

・・・我が家の愛犬でした。

 

【自分を知る】いざというときに自分があらわれる

こういったときの咄嗟の行動に、自分のことがよくあらわれます。

家財の心配をした、わたし。

生命の心配をした、犬。

この違いはなんでしょうか?

 

ここでは、社会契約説で有名な二人の思想家、ホッブズとロックの人間観の違いから、考えてみようと思います。

 

ここでは、わかりやすくシンプルにしているので、本来の学問的な意味とずれている場合があります。

 

近代的社会契約説の基礎は、本性的に自由で孤独な個人として生まれたひとが、しかし自然状態では維持不可能となり、集団生活、社会が必要となることによって、社会契約を結ぶという構図であり、これは、17世紀トマス・ホッブズジョン・ロック18世紀ジャン=ジャック・ルソー、そして20世紀ジョン・ロールズロバート・ノージックに至るまで、社会契約説を唱える哲学者に伝統的に継承されている。[1]

 

出典:ウィキペディア 社会契約

 

 

【自分を知る】ホッブズの自己保存より

ホッブズは、人間の本質は、自己保存にあるとします。

《自然》は人間を身心の諸能力において平等につくった。・・・

この能力の平等から、目的達成にさいしての希望の平等が生じる。

それゆえ、もしもふたりの者が同一の物を欲求し、それが同時に享受できないものであれば、彼らは敵となり、その目的〔主として自己保存であるがときには快楽のみ〕にいたる途上において、たがいに相手をほろぼすか、屈服させようと努める。

ホッブズ(永井道雄、上田邦義訳)『リヴァイアサンI』(中央公論新社、2009年)

人間にとって、一番大事なのは自分の生命を守ること、という人間観です。

生命だけが自分なのです。

 

震災のとき一目散に逃げ出した我が家の犬は、人間でこそありませんが、自分のことをその身体と同一視していると思われます。

シンプルに、自分の生命だけが大事なのです。

 

【自分を知る】ロックの所有権より

一方、ロックは、人間は、所有権をもっているとします。

すべての人間は、自分自身の身体に対する所有権をもっている。・・・

彼の身体の労働とその手の働きは、まさしく彼のものであるといってよい。・・・

この労働は労働した人の疑いもない所有物なのであるから、・・・ひとたび労働がつけ加えられたものに対しては、彼以外のだれも権利をもつことができないのである。

ロック(宮川透訳)『統治論』(中央公論新社、2007年)

ここでは、自分が労働を付け加えたものに対する私的所有、という概念があらわれています。

生命だけでなく、所有物に対する支配をも含んだ人間観です。

 

震災のとき、家財の心配をしていたわたしにとって、自分の範囲はこの身体だけではありませんでした。

他にも守るべき大事なものがあったのです。

 

【自分を知る】まとめ

  • 震災のとき、咄嗟に逃げ出した犬は、所有物をもたず身ひとつなので、生命だけが自分です。
  • 家財の心配をしたわたしは、生命だけではなく、所有物の支配にも自分の範囲が拡大しています。

ロックのように、自己を理性的だとすれば、自分とは、この身体を飛び出しているということもいえそうですね。

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うめとも

田舎で農家のパートをしながら、やんちゃな一人息子の子育てに励むシングルマザー。息子の成長とともに、自分のキャリアを再び考え始める。ドイツ哲学が好き。

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